介護への不安や問題点 ~介護する側、介護を受ける側、それぞれが抱える課題とは?~
日本は世界でも有数の長寿国となり、人生100年時代といわれるようになりました。一方で、高齢化の進展に伴い、「介護」は誰にとっても身近な問題となっています。
特に子育て世代の方々は、
- 子どもの教育費
- 住宅ローン
- 自身の老後資金
といった課題を抱える中で、親の介護という問題に直面する可能性があります。
近年では「ダブルケア(育児と介護の同時進行)」という言葉も広く知られるようになりました。
介護は突然始まることが多く、準備不足のまま介護生活に入るケースも少なくありません。
本記事では、
- 介護する側の不安や問題点
- 介護を受ける側の不安や問題点
- 仕事と介護の両立
- 介護離職のリスク
- 介護費用の問題
- 事前にできる備え
について、社会保険労務士の視点から詳しく解説します。
目次
なぜ今、介護問題が注目されているのか?
日本では高齢者人口が増加しています。
その結果、介護を必要とする高齢者も増加している状況です。
かつては家族や親族が中心となって介護を担うことが一般的でしたが、
- 核家族化
- 少子化
- 共働き世帯の増加
などにより、介護を取り巻く環境は大きく変化しています。
子育て世代こそ介護問題を知るべき理由
介護は高齢者だけの問題ではありません。
実際には、
- 40代
- 50代
- 60代
で親の介護が始まるケースが多く見られます。
つまり、現在子育て中の世代が、数年後には介護の当事者になる可能性が高いのです。
介護する側が抱える不安とは?
まず、介護者側の課題を見ていきましょう。
① 精神的負担
介護は長期間に及ぶことがあります。
- 終わりが見えない
- 常に気が抜けない
- 認知症対応が難しい
など、精神的なストレスが蓄積します。
特に認知症介護では、
- 徘徊
- 暴言
- 昼夜逆転
などへの対応が必要になることもあります。
② 身体的負担
介護は体力を必要とします。
例えば、
- 移乗介助
- 排泄介助
- 入浴介助
などは大きな身体的負担になります。
介護者自身が腰痛などを発症するケースも少なくありません。
③ 経済的負担
介護にはお金がかかります。
主な費用として、
- 介護保険サービス利用料
- 介護用品
- 住宅改修費
- 交通費
などがあります。
介護期間が長期化すると家計への影響も大きくなります。
④ 仕事との両立
働きながら介護を行う「ビジネスケアラー」が増えています。
しかし、
- 通院付き添い
- 緊急呼び出し
- 施設探し
などで仕事への影響が生じます。
介護離職の問題
介護を理由に退職する人もいます。
しかし、介護離職は家計に大きなダメージを与える可能性があります。
収入減少に加え、
- 年金額への影響
- 老後資金不足
などにもつながります。
介護を受ける側の不安とは?
次に、介護を受ける高齢者側の視点を考えてみましょう。
① 家族へ迷惑をかけたくない
最も多い不安です。
多くの高齢者は、
- 子どもに負担をかけたくない
- 家族の生活を壊したくない
と考えています。
② 自立できなくなる不安
高齢者にとって、「自分でできないことが増える」ことは大きな精神的苦痛です。
③ 認知症への不安
認知症は誰にでも起こり得ます。
- 判断能力低下
- 金銭管理困難
- 契約トラブル
などが生じる可能性があります。
④ 施設入所への不安
介護施設について、
- 費用が高い
- 家族と離れる
- 自由が減る
という不安を抱く方も少なくありません。
子育て世代に増える「ダブルケア」
近年大きな問題となっているのが、育児と介護を同時に行う「ダブルケア」です。
例えば、
- 小学生の子どもがいる
- 親が認知症になった
というケースです。
時間的・精神的・経済的負担が重なります。
介護費用はどれくらいかかる?
介護費用は個人差があります。
しかし、一般的には、
- 在宅介護
- 施設介護
によって大きく異なります。
在宅介護
比較的費用を抑えられますが、家族負担は増加します。
施設介護
介護負担は軽減されますが、毎月数万円から数十万円の費用がかかる場合があります。
介護保険制度を理解しよう
40歳以上になると介護保険料を負担しています。
介護が必要になった場合、
要介護認定を受けることでサービス利用が可能になります。
主な介護サービス
在宅サービス
- 訪問介護
- 訪問看護
- デイサービス
- 福祉用具貸与
施設サービス
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
などがあります。
仕事と介護を両立するために
介護離職を防ぐためには、介護保険制度を積極的に活用することが重要です。
育児・介護休業法の活用
介護を行う労働者には、法律で次の制度が認められています。
介護休業
対象家族1人につき通算93日まで取得可能です。
介護休暇
年5日(対象家族2人以上なら10日)取得可能です。
所定外労働の制限
残業制限なども利用できます。
企業に求められる支援
企業にとっても介護問題は重要です。
人材確保の観点から、
- 介護休業制度周知
- 柔軟な勤務制度
- テレワーク活用
などが求められています。
介護に備えて今からできること
① 親と話し合う
介護が始まる前に、
- 財産状況
- 希望する介護方法
- 施設利用希望
などを確認しておきましょう。
② 家族で役割分担を考える
兄弟姉妹間で、
- 介護担当
- 金銭管理
- 手続担当
などを話し合っておくことが重要です。
③ 老後資金を準備する
介護費用に備えた資金計画も重要です。
④ 公的制度を理解する
介護保険制度や成年後見制度について知識を持っておきましょう。
介護する側と介護を受ける側の主な課題
| 介護する側 | 介護を受ける側 |
|---|---|
| 精神的負担 | 家族への負担感 |
| 身体的負担 | 自立喪失への不安 |
| 経済的負担 | 認知症への不安 |
| 介護離職リスク | 施設入所への不安 |
| ダブルケア問題 | 孤独感 |
社会保険労務士へ相談するメリット
介護は単なる家庭問題ではありません。
- 介護休業制度
- 介護休暇制度
- 両立支援制度
- 労務管理
など、働く世代に密接に関係しています。
社会保険労務士へ相談することで、
- 制度活用
- 介護離職防止
- 企業の支援制度整備
などについて専門的なアドバイスを受けることができます。
参考リンク
厚生労働省 介護保険制度
育児・介護休業法
地域包括支援センター
まとめ
介護は誰にとっても他人事ではありません。
特に子育て世代は、育児と介護が重なる「ダブルケア」のリスクを抱えています。
介護する側には、
- 精神的負担
- 身体的負担
- 経済的負担
があり、介護を受ける側にも、
- 家族への負担感
- 自立喪失への不安
があります。
だからこそ、介護が始まる前から家族で話し合い、公的制度を理解し、準備しておくことが重要です。
介護は一人で抱え込むものではありません。介護保険制度や企業の両立支援制度、専門家のサポートを活用しながら、無理のない介護体制を築いていきましょう。

