年金生活者支援給付金とは?~低年金者の暮らしを支える制度を正しく理解しよう~

高齢化が進む日本社会において、「年金だけで生活していけるのか?」という不安を抱える方は少なくありません。そんな中、一定の要件を満たす方に支給される「年金生活者支援給付金」は、生活の負担を軽減する重要な制度のひとつです。

しかし、制度自体の知名度はまだ高いとは言えず、「自分が対象なのかわからない」「申請方法が難しそう」といった声も多く聞かれます。

この記事では、年金生活者支援給付金の目的、対象者、申請手続き、注意点までをわかりやすく解説します。ご自身やご家族の暮らしを守るためにも、制度を正しく理解して、必要なサポートを受けられるようにしましょう。

1. 年金生活者支援給付金とは?

年金生活者支援給付金制度は、2019年10月の消費税率引き上げ(8%→10%)に伴って導入された、公的年金受給者向けの給付制度です。

この制度の目的は、所得が少なく年金額も低い高齢者などに対して、年金とは別に給付金を支給することで、最低限の生活を支えるというものです。

【制度の根拠】

  • 年金生活者支援給付金の支給に関する法律(平成28年法律第114号)
  • 厚生労働省の運営により実施

【制度の特徴】

  • 国が支給する「現金給付」
  • 公的年金に「上乗せ」されて支給
  • 原則として、年1回の確認書類提出(現況届)が必要

2. 支給対象者と条件とは?

年金生活者支援給付金には、大きく分けて以下の3つの支給区分があります。

(1)老齢年金受給者向け給付金

■ 対象となる条件:

以下のすべてに該当する必要があります。

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 世帯全員の住民税が非課税であること
  • 前年の所得額が「一定基準以下」(令和6年度は約88万円)であること

※老齢厚生年金のみの受給者は対象外です。

(2)障害年金受給者向け給付金

■ 条件:

  • 障害基礎年金の受給者
  • 前年の所得が一定基準以下であること(老齢年金と同様)

障害等級にかかわらず、一定の所得要件を満たせば支給対象となります。

(3)遺族年金受給者向け給付金

■ 条件:

  • 遺族基礎年金の受給者であること
  • 前年の所得が一定基準以下であること

※遺族厚生年金のみの受給者は対象外となります。

3. 支給額はいくら?月額の目安と支給方法

支給額は年ごとに見直されますが、以下は令和6年度(2024年度)の基準を参考にした支給額です。

■ 月額給付金(令和6年度)

給付区分月額
老齢年金生活者支援給付金5,020円/月
障害年金生活者支援給付金6,290円/月
遺族年金生活者支援給付金5,020円/月

※年金と合わせて、毎月の年金支給日に振込されます(偶数月15日)。

この金額は決して高額とはいえませんが、年間で見ると数万円単位の支援となり、生活費や医療費の補填に役立つ制度です。

4. 申請方法と手続きの流れ

年金生活者支援給付金を受け取るためには、原則として申請が必要です。

■ 新たに年金を請求する方

老齢年金等を請求する際、給付金も同時に請求可能です。年金請求書に付属している「給付金請求書」に必要事項を記入して提出すればOKです。

■ すでに年金を受給している方

すでに年金を受け取っていて、なおかつ給付金の要件を満たすと判断された方には、日本年金機構から「請求書」が郵送されてきます。

届いた書類に必要事項を記入・押印し、指定された提出期限までに返送する必要があります。

■ 年に1度の確認書提出

一度受給が決まっても、所得状況は毎年変わる可能性があるため、「現況届(確認書)」の提出が年1回義務付けられています。

提出がない場合、支給が一時停止または中止になることがあるため、注意が必要です。

5. 年金生活者支援給付金に関する注意点

給付金の制度は支援を受けるための貴重な手段ですが、以下のような点には注意が必要です。

(1)老齢厚生年金のみの受給者は対象外

「基礎年金(国民年金)」の受給が前提となっており、厚生年金のみ受給している場合は支給対象外となります。年金の内訳をよく確認しましょう。

(2)住民税非課税であっても所得基準に注意

住民税非課税=自動的に給付金対象とは限りません。年間所得が一定額を超えると支給対象外になります。

(3)本人申請が基本、代理申請は要注意

原則として本人による申請が必要ですが、高齢者施設に入所していたり、認知症などにより対応が困難な場合は、家族や後見人が代理申請することが可能です。手続きには委任状や本人確認書類等が必要になります。

6. ファイナンシャルプランナーや社労士ができる支援とは?

「自分が対象になるのかわからない」「書類の書き方が難しい」などのご相談が多いのが、この年金生活者支援給付金制度です。

当事務所では、次のようなサポートを行っています。

■ ご提供できる支援内容

  • 受給要件の確認・制度適用診断
  • 年金生活者支援給付金の申請書作成支援
  • 年金額の試算と老後生活設計の相談
  • 遺族年金や障害年金との併給の可否の検討
  • 成年後見制度・任意代理人制度のご案内

給付金の金額は小さくとも、制度を正しく理解して受給できるかどうかは、長期的な生活設計に大きく関わります

7. まとめ:知っているだけで得をする制度、それが年金生活者支援給付金

「年金生活者支援給付金」は、まさに“知っているかどうか”が支援を受けられるかを左右する制度です。

特に、高齢者本人だけでなく、離れて暮らすご家族、福祉関係者、地域包括支援センターなどに関わる方々にも、ぜひ知っておいてほしい内容です。

  • 「自分が対象か分からない」
  • 「書類をどこに出せばよいか不明」
  • 「毎年の現況届を忘れそう」

このようなお悩みは、ぜひ専門家である社会保険労務士やファイナンシャルプランナーにご相談ください。正しく、損のない申請を行うことで、より安心して年金生活を送ることができるようになります。

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