年金から控除されるものは?~全額振り込まれない理由

年金を受け取っている方の中には、「年金額が通知より少ない」「満額が振り込まれていない」と感じた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。実は、年金は通知書に記載された支給額がそのまま振り込まれるわけではなく、法律に基づいて一定の控除が行われた後の金額が実際の受取額となります。

本記事では、社会保険労務士の視点から「年金から控除されるもの」について整理し、なぜ満額が振り込まれないのかをわかりやすく解説します。あわせて、控除額を軽減するためにできる工夫や注意点についてもご紹介します。

1. 年金から控除されるものの基本

年金から差し引かれる項目は、大きく分けて以下の3つです。

  1. 税金(所得税・住民税)
  2. 社会保険料(介護保険料・国民健康保険料など)
  3. その他(年金担保貸付の返済など特殊ケース)

特に高齢者にとって負担が大きいのは「税金」と「社会保険料」です。それぞれ具体的に見ていきましょう。

2. 税金による控除

(1)所得税

公的年金は「雑所得」として所得税の課税対象となります。ただし、年金収入には「公的年金等控除」という特別な控除が設けられており、一定額までは非課税となっています。

たとえば、65歳以上で年金収入が年158万円以下の場合は、所得税がかからないケースが多いです。逆に、それを超える年金を受け取っている方や、他の収入(給与や不動産収入など)がある方は、年金から源泉徴収という形で所得税が差し引かれます。

(2)住民税

住民税も年金収入に応じて課税されます。所得税と同様に、公的年金控除や基礎控除などを差し引いた後の所得に対して課税されます。住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、前年の収入が多かった場合には、翌年の年金から差し引かれる住民税も高くなる点に注意が必要です。

3. 社会保険料による控除

(1)介護保険料

65歳以上になると、原則として全員が介護保険の第1号被保険者となり、介護保険料を負担することになります。多くの場合、この介護保険料は年金から天引きされます。

介護保険料の額は、市区町村ごとに異なり、前年の所得に応じて段階的に決められます。たとえば、低所得の方は軽減措置により数千円程度で済みますが、一定以上の所得がある方は月額数万円になる場合もあります。

(2)国民健康保険料・後期高齢者医療保険料

75歳以上になると「後期高齢者医療制度」の対象となり、医療保険料が年金から控除されます。こちらも所得に応じて負担額が変わります。

4. 年金から控除される「その他のケース」

税金や社会保険料以外にも、以下のような理由で控除が行われることがあります。

  • 年金担保貸付の返済(令和4年度で新規受付は終了していますが、既に利用している人は返済が続いている場合あり)
  • 国民健康保険料の滞納分の差し押さえ
  • 養育費など裁判所命令による差押え

こうしたケースでは、通常よりも振込額が少なくなることがあります。

5. 年金が「満額振り込まれない」具体的な理由

ここまでの内容を整理すると、年金が通知された金額よりも少なく振り込まれる主な理由は以下の通りです。

  1. 所得税が源泉徴収されている
  2. 住民税が特別徴収されている
  3. 介護保険料や後期高齢者医療保険料が控除されている
  4. 特殊な控除(貸付返済や差押え)がある

つまり、年金受給額=「年金の支給決定額」-「税金・保険料などの控除」となります。

6. 控除額を軽減するための工夫

「控除されるのは仕方ない」と思いがちですが、工夫次第で負担を軽減できるケースもあります。

(1)扶養親族の有無を確認する

扶養親族がいる場合、所得税・住民税が軽減されることがあります。特に配偶者控除や扶養控除は見落とされやすいため、年金機構や税務署で確認するとよいでしょう。

(2)医療費控除や生命保険料控除を活用する

確定申告をすることで、源泉徴収された所得税が還付される場合があります。医療費が多い年や、生命保険・地震保険などに加入している方は、確定申告を忘れずに行うことが大切です。

(3)介護保険料の軽減制度を利用する

低所得者向けの軽減措置が設けられています。住民税非課税世帯などは大幅な減額が受けられる場合もあるため、市区町村の窓口で確認しましょう。

7. まとめ

年金から控除されるものには、主に「税金」と「社会保険料」があります。

  • 所得税や住民税は、年金額やその他の収入状況に応じて課税される
  • 介護保険料や後期高齢者医療保険料は、市区町村が決定し年金から天引きされる
  • 特殊なケースでは差押えや返済による控除もある

「通知された金額よりも少ない」と不安に感じる方も多いですが、これらの控除は法律に基づいた正当なものです。ただし、扶養控除や医療費控除、介護保険料の軽減制度をうまく活用することで、負担を減らせる可能性もあります。

ご自身の年金からどのような控除がされているのかを正しく理解することが、老後の生活設計を安心して進める第一歩です。

当事務所では、年金に関するご相談や、税金・社会保険料の仕組みに関するアドバイスも行っております。年金額に不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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