~働きながら年金を受け取る人が知るべきポイント~
2025年に公表され、2026年4月から施行される在職老齢年金制度の改正は、高齢者雇用や老後資金設計に大きな影響を及ぼす重要な改正です。
これからの日本は「70歳まで働くことが珍しくない」社会になりつつあります。
その中で、働きながら老齢厚生年金を受給する人にとって、在職老齢年金制度がどのように変わるのかは非常に重要なテーマです。
この記事では、社会保険労務士の専門的な視点から、改正のポイント、変更の背景、対象者、注意点をわかりやすく解説します。
1.そもそも在職老齢年金とは?
在職老齢年金とは、
老齢厚生年金を受給しながら働いている人の給与が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止される制度です。
対象は以下の通りです。
- 65歳以上:高在老
- 60歳~64歳:低在老
現在、特に65歳以上の「高在老」は就労する高齢者が増えている中、
“働いた分だけ年金が減る”ことに不満を持つ方が多く、制度見直しが求められていました。
2.2025年改正(2026年4月施行)で何が変わるのか?
今回の改正の中心は、
支給停止基準額(総報酬月額相当額+年金額)の見直し
現在の65歳以上の支給停止基準額は 50万円(標準)。
改正後は、以下の方向性が示されています。
●基準額の引上げ
→ 支給停止額を62万円(予定)に引き上げ。
引上げられることで、これまでより多く働いても年金が減らないようになります。
3.改正の背景は?「働く高齢者の増加」
今回の改正は、次の社会的変化が背景にあります。
(1)高齢者の就労率の上昇
総務省のデータでは、65〜69歳の就業率は約50%と高く、70代でも20%以上が働いています。
(2)“働くほど損”という不公平感
現行制度では、
- 残業して収入が上がる
- 賞与が増える
と、その分年金が減ることがあり、高齢者の就労促進に逆行しているという問題がありました。
(3)企業の人手不足への対応
企業は高齢者の力を必要としています。
年金が減る制度は、働く意欲を削ぐため、制度見直しによる労働力確保が期待されています。
4.改正後のメリット
改正により、働く高齢者は次のようなメリットを受けられます。
①働いても年金が減りにくくなる
基準額の引上げにより、現役並みの収入があっても支給停止が起こりにくくなる見込みです。
②再雇用者・パート高齢者もメリット大
高齢者雇用では、
- パート勤務
- 再雇用(60〜70歳)
- 嘱託社員
が増えています。
こうした働き方でも、年金の支給停止を気にせず働けるようになります。
5.改正後に注意すべきポイント
メリットが大きい一方で、注意点もあります。
(1)支給停止がゼロになるわけではない
あくまで「減りにくくなる」という改正であり、高収入の場合は依然として年金の一部が停止される可能性があります。
(2)会社・社労士への情報共有が重要
支給停止は、
- 年金受給額の情報
- 給与額の情報
両方が必要であり、本人と会社が間違いなく情報を届け出る必要があります。
(3)“働き損”を避けるためにはシミュレーションが重要
特に次の方は要注意です。
- 年収が高い現役シニア
- 役員報酬を受けている人
- 再雇用で給与が変動しやすい人
社労士にシミュレーションを依頼しておくと安心です。
6.改正後に企業が準備すべきこと
企業の労務担当者・経営者も改正の影響を受けます。
■(1)高齢者の就労希望の増加に備える
→「70歳就業機会確保法」とセットで考える必要あり。
■(2)給与設計・労働条件の見直し
→年金と給与のバランスを踏まえた契約へ。
■(3)人事・給与システムの改修
→賞与の扱いが変わる可能性が高いため要対応。
■(4)従業員への説明・相談体制の整備
→誤解が多い分野のため、社労士が支援するとスムーズに。
7.まとめ:今後は「働きながら年金を受け取る」が標準へ
今回の2025年改正(2026年4月施行)は、高齢者の働き方と老後の経済基盤を大きく変える重要な見直しです。
▼この記事の重要ポイント
- 基準額が50万円から引き上げられる
- 高齢者の就労促進が目的
- 年金が“減らなくなる”傾向は強いが、完全停止廃止ではない
- 高収入の方はシミュレーションが必要
在職老齢年金の改正は、働くシニアと企業の両方に関係する大きなテーマです。
当事務所では、
- 年金の受給額シミュレーション
- 在職老齢年金の支給停止予測
- 高齢者雇用と就業規則の見直し
- 企業向けの制度説明会
など、社労士として専門的な支援を行っています。
制度変更に不安のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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