【2028年4月施行予定】遺族厚生年金の支給が「5年で打ち切られる」は本当? ~制度改正の内容と対象者を社会保険労務士がわかりやすく解説~【前編】

はじめに

近年、「遺族厚生年金が5年で打ち切られる」「遺族年金がなくなる」といったニュースやインターネットの記事を目にする機会が増えています。

こうした情報を見て、「もし配偶者が亡くなったら生活はどうなるのだろう」「自分も5年間しか受け取れないのだろうか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

しかし、この情報は一部だけを切り取った表現であり、実際の制度改正の内容とは異なる部分があります。

結論から申し上げると、「すべての人の遺族厚生年金が5年で終了する」という制度ではありません

制度改正では、新たに対象となる方に対して「原則5年間の有期給付」が導入されますが、高齢者や子どもを養育している配偶者など、従来どおり給付が継続されるケースも多くあります。

本記事では、前編として、遺族厚生年金の基本的な仕組みと、制度改正の背景、対象となる人・ならない人について詳しく解説します。


遺族厚生年金とは?

遺族厚生年金とは、厚生年金保険に加入していた方や、老齢厚生年金の受給資格を満たしていた方などが亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族へ支給される年金です。

遺族の生活を支えることを目的とした公的年金制度であり、亡くなった方の厚生年金加入期間や報酬額などをもとに年金額が決まります。

主な受給対象者は次のとおりです。

  • 配偶者(夫・妻)
  • 子ども
  • 父母
  • 祖父母

ただし、実際には優先順位が定められており、誰でも受給できるわけではありません。


遺族厚生年金のイメージ

【受給の流れ】

厚生年金加入者が死亡
    ↓
遺族厚生年金の受給要件を確認
    ↓
年金請求手続き
    ↓
日本年金機構で審査
    ↓
遺族厚生年金の支給開始

「5年で打ち切り」と言われる理由

これまで、一定の要件を満たした配偶者は、年齢や状況によって長期間、あるいは生涯にわたり遺族厚生年金を受給できる場合がありました。

一方、制度改正では、男女間の制度差を見直し、就労環境や社会情勢の変化を踏まえて、給付のあり方を見直すこととされています。

その中で導入されるのが、「原則5年間の有期給付」という仕組みです。

この制度が報道などで「5年で打ち切られる」と表現されることがありますが、実際には対象者が限定されています。

「5年で打ち切り」という言葉だけが一人歩きしていますが、すべての遺族厚生年金受給者に当てはまるわけではありません


制度改正の背景

今回の見直しが行われる背景には、社会の大きな変化があります。

① 男女の就労環境の変化

制度創設当時は、「夫が働き、妻が専業主婦」という家庭が一般的でした。

しかし現在では、共働き世帯が専業主婦世帯を大きく上回り、多くの女性が働きながら家計を支えています。

こうした社会の変化を受け、男女で異なる給付制度を見直す必要性が高まっていました。


② 男女間の制度格差の解消

現行制度では、妻と夫で受給要件に違いがある部分があります。

今回の見直しでは、男女双方にとって公平な制度を目指すことが目的の一つとされています。


③ 現役世代への支援強化

若い世代では、配偶者を亡くした後も働きながら生活を維持するケースが増えています。

そのため、一定期間の生活支援を行いながら、自立を後押しする制度への転換が検討されています。


誰が制度改正の対象になるの?

制度改正では、すべての受給者が対象となるわけではありません。

主に影響を受ける可能性があるのは、一定年齢以下の子のない配偶者です。

一方で、次のような方については、従来どおりの給付が継続される、または経過措置の対象となる予定です。

  • 高齢の配偶者
  • 子どもを養育している配偶者
  • 既に遺族厚生年金を受給している方(一定の経過措置あり)
  • 改正前から受給権がある方

制度改正は、既に受給している方の生活へ急激な影響が出ないよう、段階的な実施や経過措置が予定されています。

対象者

女性

2028年度末時点で40歳未満、かつ18歳年度末までの子がいない場合に5年有期給付の対象となります。20代の女性は既に5年給付の対象です。

男性

18歳年度末までの子がいない60歳未満の方が対象です。


制度改正の対象イメージ

区分改正後の考え方(予定)
子どものいる配偶者従来どおり給付対象
高齢の配偶者従来どおり給付対象
一定年齢以下・子どものいない配偶者原則5年間の有期給付が基本
既受給者原則として経過措置の対象

※制度の詳細は、法令・政省令等により最終決定されます。


「5年間」で終わるわけではないケースもある

報道では「5年間だけ支給」と説明されることがありますが、実際には事情に応じた配慮措置が設けられる予定です。

例えば、

  • 障害がある場合
  • 十分な収入が得られない場合
  • 就労が困難な事情がある場合

などについては、継続した支援が行われる方向で制度設計が進められています。

「5年間で必ず支給終了」と決まっているわけではなく、生活状況などに応じた継続支援が検討されています


制度改正によって私たちが確認すべきこと

今回の見直しを機に、ご自身やご家族について次の点を確認しておくことをおすすめします。

  • 現在加入している年金制度
  • 配偶者の厚生年金加入状況
  • 子どもの有無
  • 将来の老齢年金見込額
  • 民間の生命保険や遺族保障の内容

遺族厚生年金は、公的保障の一つにすぎません。万が一に備えるためには、公的年金だけでなく、預貯金や生命保険などを含めた総合的なライフプランを考えることが大切です。


次回予告

後編では、以下の内容について詳しく解説します。

  • 原則5年間の有期給付とは?
  • 継続給付・経過措置の内容
  • ケース別シミュレーション
  • よくある質問
  • 社会保険労務士からのアドバイス
  • 制度を理解するための参考リンク

制度改正の内容を正しく理解することは、ご自身やご家族の将来設計を考えるうえで非常に重要です。正確な情報に基づいて備えを進め、不安を安心へと変えていきましょう。

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