新年度が始まり1か月が経過する5月。ゴールデンウィーク明けから、従業員のやる気が低下したり、体調不良を訴えたりするケースが見られることはありませんか?
この時期に注意が必要なのが「5月病」と呼ばれる心身の不調です。
この記事では、5月病の原因と症状、企業として行うべきメンタルケア対策、労務管理上のポイントを解説します。従業員の健康を守ることは、生産性の向上と離職防止にもつながる重要な取り組みです。ぜひ社内体制の見直しにお役立てください。
5月病とは?その定義と背景
「5月病」とは正式な医学的診断名ではなく、新入社員や異動・転勤した従業員が新しい環境に適応できず、ストレスから心身の不調を訴える状態を指します。
よくある症状:
- 出社拒否・遅刻・欠勤の増加
- 無気力、集中力の低下
- 頭痛、腹痛、倦怠感などの身体症状
- 気分の落ち込み、不安感、イライラ
特に4月に新たな環境に置かれた人ほどリスクが高く、ゴールデンウィークで一時的に緊張が緩むことで、再び業務に戻ることが困難になるケースが多いのです。
企業として取り組むべき5月病対策とは?
従業員が安心して働き続けるためには、メンタルヘルス対策を含む職場環境の整備が不可欠です。ここでは、企業としてすぐに実行できる主な対策をご紹介します。
1. 定期的な声かけ・面談を実施する
直属の上司や人事担当者が個別に声をかけ、短時間でも話を聴く機会を設けましょう。「最近どう?」という何気ない会話から、不調の兆しを察知できることがあります。
とくに新入社員や異動者に対しては、1on1ミーティングやフォローアップ面談が効果的です。
2. ストレスチェック制度の活用
50人以上の事業所ではストレスチェックの実施が義務付けられていますが、50人未満の企業も積極的に導入することをおすすめします。
ストレスチェックを通じて、従業員自身がストレスに気づくきっかけとなり、早期対応が可能となります。
3. 社内相談窓口・外部機関の周知
「社内では相談しづらい」という従業員のために、産業医や外部EAP(従業員支援プログラム)との連携を検討しましょう。
相談先があることで、メンタル不調の深刻化を防ぐことができます。周知方法としては、ポスター掲示や社内ポータルサイトでの案内が効果的です。
4. 勤務環境や業務量の見直し
過重労働はメンタル不調の大きな原因となります。業務の偏りや残業時間の管理を見直し、無理のない働き方を実現しましょう。
リモートワークの導入やフレックス制度など、柔軟な勤務制度の導入も検討すべきです。
5. 「成長の機会」を意識したフィードバック
5月病の背景には、「自分は役に立っていない」「成長できていない」などの無力感や不安が存在します。
上司や先輩からの具体的なポジティブフィードバックや、目標設定のサポートが、従業員の自己肯定感を高めます。
労務管理上の注意点と法的責任
精神障害に対する労災認定のリスク
従業員の精神疾患が業務に起因するものであると認定された場合、企業は労災責任や安全配慮義務違反のリスクを負うことになります。
厚生労働省の「精神障害の労災認定の基準」では、パワハラ・長時間労働・過大な業務量などが原因とされたケースが多く報告されています。
安全配慮義務を果たすには
企業には労働契約法第5条に基づく安全配慮義務があります。メンタルヘルス不調に対して何も対策を講じていなければ、訴訟や労基署からの指導対象となる可能性があります。
「未然防止」「早期発見」「適切な対応」の3本柱で対策を講じておくことが、企業リスクの低減につながります。
まとめ|「5月病」対策は継続的な職場改善の第一歩
5月病は一過性のものと思われがちですが、適切な対策を怠ると、長期休職や退職につながる恐れがあります。
企業にとって、従業員のメンタルヘルスは生産性・定着率に直結する重要な課題です。人事・労務担当者は、5月だけでなく年間を通じて予防的な視点で職場環境の整備を行いましょう。
コメント