近年、「五月病」だけでなく「六月病」という言葉も耳にするようになりました。特に、働き方改革や人材確保が課題となる中で、従業員のメンタルヘルスを軽視することは企業リスクにもなりかねません。
この記事では、六月病の症状や原因、五月病との違い、企業が取り組むべき具体的な対策について、社会保険労務士の視点からわかりやすく解説します。メンタル不調の予防と早期対応を進めるうえで、ぜひご活用ください。
1. 六月病とは?
■ 概要
「六月病」は医学的な正式名称ではありませんが、新年度から2か月ほど経過した6月頃に発症する、精神的・身体的な不調の総称です。就職や異動・転勤などで新たな環境に適応したものの、緊張の糸が切れる時期に一気に疲労やストレスが表面化することから、6月に症状が現れやすいといわれています。
■ 主な症状
六月病の代表的な症状には以下のようなものがあります。
- 倦怠感、疲労感が抜けない
- 気分の落ち込み、やる気の低下
- 食欲不振や不眠
- 出社前の強い憂うつ感
- 集中力や判断力の低下
- 身体的不調(頭痛・腹痛など)
2. 五月病との違いは?
「五月病」と「六月病」は似た症状を持ちますが、背景には違いがあります。
比較項目 | 五月病 | 六月病 |
---|---|---|
発症時期 | 5月の連休明け頃 | 6月中旬〜下旬頃 |
原因 | 新生活への不安、理想とのギャップ | 適応後の反動、慢性的なストレスの蓄積 |
主な対象 | 新入社員・新入生 | 若手社員・中堅社員・異動者など広範囲 |
心理状態 | 環境変化への不安 | 慣れによる緊張の緩和と疲労の噴出 |
五月病は「適応障害」に分類されることが多い一方で、六月病はストレスによる軽度のうつ状態やバーンアウト(燃え尽き症候群)に近いケースもあります。
3. なぜ6月に心が折れるのか?~六月病の原因
■ 長引くストレスと緊張の反動
4月の入社・異動・新年度で頑張ってきた人ほど、5月を過ぎてから蓄積したストレスが爆発しやすくなります。初めは気を張って頑張っていたものの、6月に入って少し慣れたころに気が抜け、心身に疲れが出るのです。
■ 梅雨による体調不良と気分の落ち込み
6月といえば梅雨の季節。気圧や湿度の変化、日照不足が自律神経を乱しやすく、気分の落ち込みや体調不良を引き起こす要因になります。
■ 評価や成果へのプレッシャー
新年度の業務が本格化し、「結果を出さなければならない」というプレッシャーが強まる時期でもあります。若手や異動者が、成果を求められて追い詰められることで、精神的負担が増加します。
4. 六月病対策:従業員自身ができること
六月病を予防・軽減するには、日常のセルフケアが非常に重要です。
① 規則正しい生活
- 睡眠・食事・運動を整え、体内リズムを維持
- スマホやPCの見過ぎに注意し、夜は早めに就寝
② 休養をしっかりとる
- 週末は仕事から離れ、趣味やリラックスタイムを確保
- 無理に頑張りすぎず、自分の限界を意識する
③ 人に相談する
- 同僚、家族、産業医、カウンセラーなどに話を聞いてもらう
- 一人で抱え込まないことが最大の予防策
5. 企業が取り組むべき六月病対策~社労士の視点
■ ストレスチェック制度の活用
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度は、六月病の早期発見にも役立ちます。メンタルヘルス不調の兆候を可視化し、対象者へ産業医との面談を案内するなど、早期対応を促進します。
■ 面談・フォロー体制の整備
- 人事担当者や上司が定期的に面談を実施し、悩みを聞く機会をつくる
- メール・チャットだけでなく、対面コミュニケーションも重視
- 必要に応じて外部のEAP(従業員支援プログラム)を活用
■ 年次有給休暇の取得促進
忙しさや遠慮から有給取得率が低い企業では、メンタル不調の温床となりやすくなります。年次有給休暇の取得を奨励し、「休んでいい職場文化」を醸成しましょう。
■ 離職リスクへの対応
六月病は、放置すると早期退職や長期休職につながる恐れがあります。社会保険労務士としては、就業規則や休職制度の整備、復職支援の体制構築を行うと同時に、管理職研修や社内教育を通じた意識改革をサポートすることが重要です。
6. 六月病とハラスメントの関係にも注意
六月病の背景には、職場内のパワハラや過重労働、コミュニケーション不全が隠れているケースもあります。従業員が「なんとなく疲れている」「やる気が出ない」と感じている場合、職場環境の見直しも必要です。
労務管理の専門家として、社会保険労務士は企業内のリスクを見える化し、適切な対策を提案する立場として機能します。
まとめ:六月病を防ぐためには、企業と従業員の協力が不可欠
六月病は、現代の働き方や環境変化によって起きやすくなっているメンタル不調の一種です。五月病と似ているようで、その背景や発症のタイミングには違いがあり、より広い世代が影響を受ける可能性があります。
企業にとって、従業員の心身の健康は生産性と定着率のカギ。社内での声掛けやストレスチェック、メンタルケアの仕組み整備など、予防と早期発見を意識した取り組みが求められます。
社会保険労務士としては、労務管理の見直し、休職制度の整備、職場環境の改善支援を通じて、企業の健全な発展と従業員の働きやすさを両立できるようお手伝いします。
ご相談はお気軽に当事務所まで。職場環境の改善やメンタルヘルス制度の整備など、専門的な支援で御社をバックアップいたします。
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