【2026年7月改正】障害者法定雇用率引き上げについて ~企業・働く人への影響とは?法改正のポイントを社会保険労務士が詳しく解説~

近年、日本では少子高齢化による労働力不足が深刻化する一方で、「誰もが能力を発揮できる共生社会」の実現に向けた取組みが進められています。その中でも重要な制度が障害者雇用制度です。

障害者雇用促進法では、一定規模以上の事業主に対して、障害者を一定割合以上雇用することを義務付けています。この割合を「障害者法定雇用率」といいます。

2026年7月には、この法定雇用率がさらに引き上げられる予定となっており、多くの企業が採用計画や職場環境の見直しを迫られることになります。

一方で、障害のある方やその家族にとっても、就職や転職の機会が広がる重要な制度改正です。

本記事では、社会保険労務士の立場から、2026年7月改正の概要、企業への影響、労働者にとってのメリット、今後求められる企業の対応について詳しく解説します。


障害者法定雇用率とは?

障害者法定雇用率とは、企業などの事業主が常用労働者のうち、一定割合以上の障害者を雇用しなければならないとする制度です。

この制度は、「障害者の職業の安定」と「社会参加の促進」を目的として設けられています。

法定雇用率は、民間企業だけでなく、国・地方公共団体・教育委員会などにも適用されています。


なぜ法定雇用率が引き上げられるのか?

障害者の就労希望者は年々増加しています。

また、企業においても多様な人材の活躍を推進する「ダイバーシティ経営」が重要視されるようになりました。

そのため、障害者雇用をさらに促進する目的で法定雇用率が段階的に引き上げられています。


【2026年7月改正】法定雇用率の引き上げ

2026年7月から、民間企業の法定雇用率は次のように引き上げられます。

時期民間企業の法定雇用率
2024年4月~2.5%
2026年7月~2.7%

法定雇用率が2.7%へ引き上げられることにより、障害者を雇用すべき企業の範囲や、必要な雇用人数が増加します


法定雇用人数のイメージ

例えば、常用労働者が100人いる企業の場合、

  • 2024年4月~:100人 × 2.5% = 2.5人 → 3人
  • 2026年7月~:100人 × 2.7% = 2.7人 → 3人

一方、150人の企業では、

  • 150人 × 2.5% = 3.75人 → 4人
  • 150人 × 2.7% = 4.05人 → 5人

となり、新たに1人の雇用が必要になるケースがあります。


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対象となる障害者

法定雇用率の対象となるのは、主に次の方です。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者(一定の要件あり)

障害者手帳などの確認が必要となります。

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法定雇用率未達成の場合は?

法定雇用率を満たしていない企業は、障害者雇用納付金制度の対象となる場合があります。

また、

  • ハローワークからの行政指導
  • 雇入れ計画の作成命令
  • 企業名の公表

などの措置が行われる可能性もあります。

法定雇用率を満たすことは、企業の社会的責任(CSR)やコンプライアンスの観点からも重要です


障害者雇用納付金制度とは?

障害者雇用納付金制度は、法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、その財源をもとに障害者を積極的に雇用している企業へ調整金や報奨金を支給する制度です。

これにより、企業間の経済的負担の公平化が図られています。


企業が取り組むべき対応

① 採用計画の見直し

必要な雇用人数を確認し、早めに採用計画を立てることが重要です。


② 職場環境の整備

障害のある方が働きやすい環境づくりも欠かせません。

例えば、

  • バリアフリー化
  • ICT機器の活用
  • 業務内容の見直し

などが挙げられます。


③ 合理的配慮の提供

障害者雇用促進法では、事業主に合理的配慮の提供が求められています。

具体例としては、

  • 通院時間への配慮
  • 業務指示方法の工夫
  • 補助機器の導入

などがあります。


④ 管理職・社員への研修

障害特性への理解を深めるため、社内研修を実施することも重要です。


労働者にとってのメリット

今回の改正は、障害のある方だけでなく、職場全体にも良い影響をもたらします。

例えば、

  • 多様性を尊重する職場づくり
  • コミュニケーション力の向上
  • 業務の見直しによる効率化
  • 誰もが働きやすい職場環境の実現

などが期待されます。


よくある質問

Q1. パートタイマーも法定雇用率の計算対象になりますか?

一定の所定労働時間などの要件を満たす短時間労働者は、算定対象となる場合があります。


Q2. 障害者を雇用すればよいだけですか?

いいえ。雇用後も適切な配置や合理的配慮を行い、継続して働ける環境を整えることが重要です。


Q3. 中小企業にも影響がありますか?

はい。常用労働者数に応じて法定雇用義務が生じる企業では、今回の改正による影響を受ける可能性があります。


社会保険労務士からのアドバイス

今回の法定雇用率引き上げは、単に「採用人数を増やす」という話ではありません。

障害のある方が能力を発揮し、長く安心して働ける職場環境を整えることが、企業に求められる最も重要なポイントです

そのためには、

  • 採用計画
  • 就業規則の見直し
  • 合理的配慮の実施
  • 管理職研修
  • 定着支援

まで含めた総合的な対応が必要になります。

また、障害者雇用は企業の社会的責任を果たすだけでなく、多様な人材が活躍できる組織づくりにつながり、結果として企業価値の向上にも寄与します。


企業が準備すべきポイント

対応項目内容
採用計画必要雇用人数の確認・採用活動
職場環境整備バリアフリー、ICT活用、設備改善
合理的配慮業務内容や勤務方法の調整
社員教育障害理解研修、管理職研修
定着支援定期面談、相談窓口、フォロー体制

参考リンク


まとめ

2026年7月から、民間企業の障害者法定雇用率は2.7%へ引き上げられます。

この改正により、障害者雇用の対象となる企業や必要な雇用人数が増え、企業には採用計画や職場環境整備、合理的配慮の充実など、より積極的な対応が求められます。

障害者雇用は「法令を守るため」だけでなく、多様な人材が能力を発揮できる組織づくりにつながる重要な取組みです

企業・労働者双方が制度を正しく理解し、障害の有無にかかわらず誰もが安心して働ける職場を目指すことが、これからの時代に求められる姿勢といえるでしょう。

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