企業の人事・労務担当者にとって、毎年必ず行わなければならない重要な手続きの一つが「労働保険の年度更新」です。
年度更新は、労災保険と雇用保険の保険料を確定し、次年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。
毎年行う手続きではあるものの、
- 「計算方法が分かりにくい」
- 「どの賃金を含めればよいのか迷う」
- 「申告期限を忘れそうになる」
- 「電子申請に切り替えるべきか悩んでいる」
という声も少なくありません。
特に令和8年度の年度更新においても、正確な賃金集計と期限内申告が求められます。
本記事では、人事担当者向けに、
- 労働保険年度更新の概要
- 対象事業所
- 手続きの流れ
- 保険料計算方法
- よくあるミス
- 電子申請の活用
- 社会保険労務士へ依頼するメリット
について詳しく解説します。
労働保険の年度更新とは?
労働保険とは、
- 労災保険
- 雇用保険
を総称したものです。
事業主は労働保険料を納付する義務があります。
しかし、保険料は前年度の賃金総額が確定しなければ正確に計算できません。
そのため、毎年1回、「確定保険料」と「概算保険料」を申告・納付する手続き
が必要になります。
これが「年度更新」です。
年度更新の対象期間
令和8年度の年度更新では、
確定保険料
令和7年4月1日~令和8年3月31日
概算保険料
令和8年4月1日~令和9年3月31日
が対象となります。
年度更新のスケジュール
例年、
6月1日から7月10日までが申告・納付期間となります。
期限を過ぎると、
- 延滞金
- 追徴金
の対象になる場合があります。
なぜ年度更新が必要なのか?
労働保険料は、
前年度の賃金総額を基に算出されます。
しかし、年度開始時点では賃金総額が確定していません。
そこで、
- 前年度保険料を確定
- 当年度概算保険料を申告
する仕組みとなっています。
対象となる事業所
原則として、労働者を1人でも雇用している事業所は対象です。
対象となる事業
- 株式会社
- 有限会社
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 個人事業
- NPO法人
など。
労働保険料の計算基礎となる賃金
年度更新で最も重要なのが賃金集計です。
賃金に含まれるもの
基本的には、
労働の対償として支払われるものです。
例えば、
- 基本給
- 残業代
- 通勤手当
- 家族手当
- 役職手当
- 賞与
など。
賃金に含まれないもの
例えば、
- 結婚祝金
- 傷病見舞金
- 出張旅費実費
などは含まれません。
人事担当者が迷いやすい項目
特に注意が必要なのは、
- 通勤手当
- 現物給与
- 賞与
- 住宅手当
です。
社会保険の報酬とは考え方が異なる部分もあるため注意が必要です。
労災保険料率とは?
労災保険料率は業種ごとに異なります。
例えば、
- 建設業
- 製造業
- 運送業
- 小売業
ではリスクが異なるためです。
雇用保険料率とは?
雇用保険料率も業種により異なります。
また、
- 労働者負担分
- 事業主負担分
に分かれています。
毎年改定される可能性があるため確認が必要です。
年度更新の流れ
STEP1 賃金集計
まず前年度の賃金総額を集計します。
STEP2 確定保険料計算
前年度の賃金総額に保険料率を掛けます。
STEP3 概算保険料計算
今年度見込み賃金を基に計算します。
STEP4 申告書作成
申告書へ記入します。
STEP5 納付
金融機関または電子納付を行います。
電子申請がおすすめ
近年は電子申請利用が増えています。
電子申請のメリット
① 24時間申請可能
役所へ行く必要がありません。
② 記入ミス削減
入力補助機能があります。
③ 書類管理が容易
データ保存が可能です。
④ テレワーク対応
場所を選ばず申請できます。
よくあるミス
よくあるミス① 賃金集計漏れ
最も多いミスです。
特に、
- 賞与
- 通勤手当
- 時間外手当
の漏れが見受けられます。
よくあるミス② 雇用保険対象者の誤り
短時間労働者の取扱いなどに注意が必要です。
よくあるミス③ 保険料率の誤適用
毎年変更される可能性があります。
最新料率を確認しましょう。
よくあるミス④ 建設業の一括有期事業
建設業では独自ルールがあります。
専門的判断が必要になることもあります。
納付方法
一括納付
原則です。
延納制度
概算保険料が一定額以上の場合、分割納付が可能です。
年度更新を怠るとどうなる?
期限までに手続きをしない場合、
行政から指導を受けることがあります。
さらに、追徴金や延滞金が発生する可能性があります。
人事担当者が事前に準備すべきこと
年度更新時期になる前に、
以下を準備しましょう。
チェックリスト
□ 賃金台帳
□ 賞与支払記録
□ 出勤簿
□ 雇用保険加入状況
□ 保険料率確認
□ 労働者数確認
中小企業で特に多い課題
中小企業では、
- 担当者が1人
- 総務兼任
- 労務知識不足
などの事情があります。
そのため、
年度更新時期に業務が集中しやすい傾向があります。
社会保険労務士へ依頼するメリット
年度更新は毎年行う手続きですが、
- 法改正
- 保険料率改定
- 集計ミス
などのリスクがあります。
社会保険労務士へ依頼することで、
- 正確な申告
- 期限管理
- 労務相談
- 電子申請対応
が可能になります。
参考リンク
厚生労働省 労働保険年度更新
電子政府 e-Gov
労働保険適用徴収システム
まとめ
令和8年度の労働保険年度更新は、企業にとって極めて重要な法定手続きです。
特に人事担当者は、「正確な賃金集計」と「期限内申告」を確実に行う必要があります。
近年は電子申請の活用も進んでおり、業務効率化の観点からも検討する価値があります。
また、
- 賃金集計
- 保険料計算
- 雇用保険適用
に不安がある場合は、早めに社会保険労務士へ相談することをおすすめします。
適切な年度更新を行うことは、企業のコンプライアンス確保と円滑な労務管理の第一歩といえるでしょう。

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