高齢化社会が進むなかで、多くのご家庭で「介護保険サービス」を利用する場面が増えています。介護サービスを利用するためには、まず市区町村に申請を行い「要介護認定(介護認定)」を受ける必要があります。しかし、この認定結果が希望と異なり「もっと重い区分になると思っていたのに軽い結果だった」「非該当になってしまった」といった不満を抱くケースは少なくありません。
この記事では、介護認定の仕組みと、納得がいかない場合の対応方法を社会保険労務士の視点から詳しく解説します。
介護認定とは?
介護認定は、介護保険制度に基づいて市区町村が行う判定です。
申請に基づき、訪問調査(聞き取り調査)や主治医の意見書をもとに、全国共通の一次判定ソフトで「要介護度」の目安が算出されます。その後、介護認定審査会という専門家の会議で最終的な判定が決定します。
要介護度は以下の区分に分かれます。
- 非該当(自立):介護保険サービスの対象外
- 要支援1・2:比較的軽度、生活支援中心
- 要介護1〜5:数字が大きいほど介護の必要度が高い
この認定結果によって、利用できる介護サービスの範囲や支給限度額が大きく変わるため、ご本人やご家族にとって重要な意味を持ちます。
認定結果に納得できないケースとは?
介護認定に不満が生じる典型的なケースには、以下のようなものがあります。
- 「普段はもっとできないことが多いのに、調査時に限って元気に見えてしまった」
- 「主治医の意見書が実際の状態を反映していない」
- 「生活上の困難さが十分に考慮されていない」
- 「介護サービスをもっと受けたいのに、軽度判定で限度額が足りない」
特に高齢者は「見栄」や「その場の頑張り」で実態より良く見えてしまうことがあり、訪問調査の時点で本当の状態が十分に伝わらないことがよくあります。
納得できないときの対応方法
1. まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談
認定結果が出た後は、担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。実際の生活状況と判定内容の差についてアドバイスを受けることで、今後の対応策が見えてきます。
2. 「区分変更申請」を検討
認定結果に不服がある場合、区分変更申請を行うことができます。
これは、心身の状態が変化したときに再度認定を受け直す手続きですが、「認定結果が実態に合っていない」と感じるときにも利用されることがあります。
申請先は市区町村の介護保険課等で、再度調査と判定が行われます。
3. 「不服申立て(審査請求)」を行う
どうしても納得がいかない場合は、審査請求という法的手段も用意されています。
これは「都道府県介護保険審査会」に対して行うもので、認定結果そのものに異議を申し立てる正式な手続きです。
- 提出期限:処分通知を受けた日から3か月以内
- 提出先:市区町村を通じて都道府県介護保険審査会
- 結果:審査会で認定の妥当性が再検討される
ただし、審査請求には時間がかかる場合が多いため、実際には区分変更申請で対応することが多いのが現実です。
認定を有利に進めるためのポイント
認定が実態に沿うようにするには、申請や調査の段階から準備しておくことが大切です。
1. 事前に「困っていること」を整理
- トイレや入浴の困難さ
- 食事や服薬の管理状況
- 転倒リスクや徘徊の有無
- 家族の介護負担の度合い
これらをメモにしておき、調査員や主治医に正確に伝えることが重要です。
2. 調査の場で「良い面だけを見せない」
高齢者ご本人が「頑張って見せてしまう」ことはよくあります。ご家族は横で実際の困難さを補足説明することを忘れないようにしましょう。
3. 主治医に実態を伝えておく
主治医の意見書は認定に大きく影響します。診察時に普段の生活状況をきちんと伝えることが大切です。
社会保険労務士ができるサポート
社会保険労務士は「労務」や「社会保障制度」に関する専門家として、介護保険制度についてのアドバイスや手続き支援を行うことができます。
- 区分変更申請や審査請求の書類作成支援
- 介護休業制度や仕事と介護の両立に関する相談
- 家族の負担を軽減するための社会保障制度活用の助言
介護認定に納得がいかないときこそ、専門家に相談することで選択肢が広がり、安心して今後の介護生活を進めることができます。
まとめ
介護認定は、介護サービスを利用する上で欠かせないステップですが、その判定結果が実態に合わず不満を抱く方も多くいます。
- 認定に納得がいかない場合は、まずケアマネジャーや地域包括支援センターに相談
- 必要に応じて「区分変更申請」や「審査請求」で再判定を求める
- 調査時には普段の困難さを正しく伝えることが重要
納得できる介護認定を得ることは、ご本人の生活の質だけでなく、ご家族の安心にもつながります。もし対応に迷われる際は、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

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