2025年度の最低賃金が全国平均で過去最大の「63円」引き上げとなる見通しが発表され、経営者・人事担当者の間で大きな関心を集めています。この急激な最低賃金の上昇は、特に中小企業や人件費負担の大きい業種にとって、経営課題となることは避けられません。
この記事では、最低賃金引き上げの背景や今後の見通し、そして企業が取るべき実務的な対応策について、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。
1. 最低賃金とは?その意義と構成
最低賃金制度とは、労働者に対して使用者が支払わなければならない最低限の賃金額を国が定める制度です。最低賃金は以下の2種類に分かれます。
- 地域別最低賃金:都道府県ごとに定められる(例:東京都、北海道など)
- 特定(産業別)最低賃金:特定の産業に従事する労働者に適用される
地域別最低賃金は、すべての労働者に対して適用され、パート・アルバイト・契約社員など雇用形態に関係なく、時間給での支給額がこの額を下回ってはならないと定められています。
2. 【2025年度】最低賃金が過去最大「63円」引き上げへ
厚生労働省の中央最低賃金審議会が、2025年度の最低賃金の引き上げ目安を全国平均で時給1,050円超え、引き上げ幅は63円と発表しました。これまでの最大引き上げ幅は2023年の43円でしたが、今回はそれを大幅に上回るものです。
各都道府県の引き上げ後の目安(例):
- 東京:1,113円 → 1,176円
- 大阪:1,064円 → 1,127円
- 福岡:941円 → 1,004円
- 宮城:923円 → 986円
※正式な発効は各地方審議会の決定を経て、2025年10月頃になる見込みです。
3. 最低賃金引き上げの背景
最低賃金の大幅な引き上げには、以下のような背景があります。
① 物価高騰による実質賃金の低下
物価上昇により、実質賃金(生活水準を反映した賃金)が低下傾向にあります。労働者の生活を守るためには、名目賃金の引き上げが不可欠です。
② 政府目標「1,500円への段階的引き上げ」
岸田政権は「最低賃金全国平均1,500円を目指す」と明言しており、今回の大幅引き上げもその一環です。
③ 地域間格差の是正
東京や大阪など都市部との最低賃金格差が広がる中、地方でも人材確保のための水準引き上げが求められています。
4. 企業への影響とは?
最低賃金の引き上げは、次のような影響を企業にもたらします。
① 人件費の増加
特にパート・アルバイトを多く雇用している企業では、基本時給だけでなく、交通費や賞与にも連動することで全体的な人件費が上昇します。
② 労務管理の見直しが必要
最低賃金を下回る給与設定があると労働基準法違反となり、指導や是正勧告の対象になります。
③ 雇用調整や生産性向上の必要性
利益圧迫に対処するため、企業は業務の効率化、シフトの見直し、無駄な業務の削減などに迫られます。
5. 企業が取るべき対応策とは?
最低賃金の引き上げに伴い、企業は次のような具体的対応が求められます。
① 賃金体系の総点検
- 時給換算で最低賃金を下回っていないか確認
- 職種・役職によっては手当を調整する必要も
② 就業規則・賃金規程の見直し
- 時給変更にともなう賃金規程の変更届出
- 労使協定の締結や労働者代表との協議
③ 労働時間・シフト管理の効率化
- AIシステムの導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化
- 労働時間の短縮によるコスト削減
④ 国の支援策の活用
中小企業には以下のような支援策も用意されています。
【業務改善助成金】
- 最低賃金の引き上げに伴う設備投資や業務効率化に対する助成
- 最大600万円の助成も可能(従業員数による)
【キャリアアップ助成金】
- 正社員転換や処遇改善に対して助成金を支給
これらを積極的に活用することでコスト負担の緩和が可能です。
6. 最低賃金引き上げ後のチェックポイント
- すべての従業員の時給が地域別最低賃金を上回っているか
- 月給制社員の時給換算額(総支給 ÷ 所定労働時間)でも確認
- インターン・研修期間中の賃金も最低賃金以上であること
- 割増賃金の基礎単価も見直す必要がある
7. 社労士としてのアドバイス
最低賃金の引き上げは「ただ給与を上げればよい」という単純な話ではありません。労務トラブルや人件費過多による赤字を防ぐためにも、下記のような対応が不可欠です。
- 賃金制度の抜本的見直し
- 能力・成果に応じた賃金設定(職務給の導入など)
- 生産性向上のための教育・仕組み作り
最低賃金の問題は、単なる「コストアップ」ではなく、「企業の体質改善」に取り組む好機でもあります。当事務所では、中小企業の実情に合わせたオーダーメイドの就業規則・賃金制度の設計をご提案しています。
まとめ|最低賃金の引き上げに正しく対応することが、企業の未来を左右する
最低賃金の大幅引き上げは、企業にとって避けては通れない現実です。しかし、ただ対応を後回しにするのではなく、今こそ社内の制度や働き方を見直すチャンスと捉えることが重要です。
「何から手をつければいいのかわからない」「どこが違反になっているか不安」という方は、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。最低賃金対策から助成金申請、就業規則の整備まで、貴社にとって最適なアドバイスをお届けいたします。

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