医療機関を受診した際、「選定療養費がかかります」と説明された経験はありませんか?特に大きな病院(大学病院や総合病院)を受診した際に、通常の診療費とは別に数千円~1万円以上の費用が請求されることがあります。
この追加費用の正体が「選定療養費」です。
近年の医療制度改革により、この制度はより重要性を増しており、知らずに受診すると「思わぬ出費」につながる可能性があります。
この記事では、社会保険労務士の視点から、選定療養費の仕組み、対象となるケース、費用の目安、注意点、対策までをわかりやすく解説します。
選定療養費とは?
選定療養費とは、患者が自ら希望して特別な医療サービスを受ける場合や、医療機関の役割分担に基づき本来必要とされる手続きを経ずに大病院を受診した場合に発生する追加費用です。
制度の根拠は健康保険法などに基づく「保険外併用療養費制度」の一つです。
通常の医療費は公的医療保険により3割負担などで済みますが、選定療養費は**全額自己負担(10割負担)**となります。
なぜ選定療養費があるのか?
選定療養費の目的は主に次の2つです。
① 医療機関の役割分担の推進
日本の医療制度では、
- 診療所(クリニック):初期診療
- 大病院:高度医療
という役割分担が求められています。
軽症でいきなり大病院に患者が集中すると、本来必要な重症患者の診療に支障が出てしまいます。
そのため、
まずはかかりつけ医を受診し、必要に応じて紹介状をもらう
という流れを促すために、選定療養費が設けられています。
② 患者の選択による医療サービスの提供
特別室(個室)や高度な医療機器の利用など、患者の希望による医療については、保険診療とは別に自己負担とする考え方です。
選定療養費がかかる主なケース
① 紹介状なしで大病院を受診した場合
最も代表的なのがこのケースです。
対象となるのは、一般的に
- 200床以上の病院
- 特定機能病院(大学病院など)
です。
紹介状なしで受診すると、初診時に選定療養費がかかります。
② 大病院での再診時
一度紹介状で受診した後、症状が安定したにもかかわらず、引き続き大病院に通院する場合も対象となることがあります。
③ 患者の希望による医療
例えば、
- 差額ベッド(個室)
- 予約診療
- 特別な医療機器の使用
などです。
選定療養費の金額はいくら?
2022年の制度改正により、金額は全国的に引き上げられています。
紹介状なしの初診
- 医科:7,000円以上
- 歯科:5,000円以上
再診時
- 医科:3,000円以上
- 歯科:1,900円以上
※病院ごとに設定されており、実際には1万円以上となるケースもあります。
制度イメージ(受診の流れ)
※クリニック受診 → 紹介状 → 大病院受診(選定療養費なし)
※紹介状なしで直接受診 → 選定療養費発生
選定療養費がかからないケース
次のような場合は、選定療養費が不要です。
① 紹介状がある場合
かかりつけ医からの紹介状があれば、追加費用はかかりません。
② 救急搬送など緊急時
救急車で搬送された場合など、緊急性があると判断される場合は対象外です。
③ 特定の公費負担医療の対象者
生活保護受給者など、一部の公費負担制度の対象者は免除されることがあります。
労働者世代が注意すべきポイント
① 突然の出費に注意
選定療養費は保険適用外のため、全額自己負担です。
知らずに受診すると、診療費とは別に数千円~1万円以上の支出が発生します。
② 会社員でも対象になる
健康保険に加入していても、選定療養費は対象外です。
つまり、
会社員でも自己負担は避けられません。
③ 家族の受診にも影響
子どもや配偶者が大病院を受診した場合にも発生するため、家計全体で注意が必要です。
選定療養費を回避する方法
① かかりつけ医を持つ
まずは地域のクリニックを受診し、必要に応じて紹介状をもらうことが重要です。
② 紹介状を必ず取得する
紹介状があれば、選定療養費は原則不要です。
③ 病院の役割を理解する
- 軽症:クリニック
- 重症・専門治療:大病院
と使い分けることが重要です。
医療制度改革と今後の動向
日本では医療費の増加が課題となっており、今後も
- 大病院の受診制限
- 選定療養費の引き上げ
などの可能性があります。
そのため、制度の理解はますます重要になります。
まとめ
選定療養費は、医療機関の役割分担を促進し、医療の効率化を図るための重要な制度です。
ポイントをまとめると次の通りです。
- 紹介状なしで大病院を受診すると追加費用が発生
- 金額は数千円~1万円以上
- 保険適用外で全額自己負担
- 紹介状があれば回避可能
労働者世代にとっては、家計への影響も無視できません。日頃からかかりつけ医を持ち、適切な受診行動を取ることが大切です。
医療制度は複雑ですが、正しく理解することで無駄な支出を防ぐことができます。今後の安心した生活のためにも、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

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