昨今、働きながらスキルを身につけ直す「リスキリング」「キャリアアップ」「再教育」が企業・個人ともに注目されています。
しかし、仕事を続けながら資格取得や専門教育を受けるのは難しく、特に「長期間、無給で休むこと」がネックとなることがあります。
そこで、2025年10月から新たに創設された 教育訓練休暇給付金 。
この制度は、無給の教育訓練休暇を取得して学び直しに専念したい人を経済的に支援するもので、キャリア形成の強力な後押しになります。
本記事では、制度の目的・仕組みから、具体的な受給要件、申請手続きの流れや注意点、そして活用時のメリット・留意点について、社会保険労務士の視点で分かりやすく解説します。
1. 教育訓練休暇給付金とは?
● 制度の目的
- 働きながらのスキルアップや再教育を支援
- 離職せずに教育訓練を受けることで雇用の安定につなげる
- 人材のキャリア形成と企業の組織力強化の両立
これまで、会社を辞めなければできなかった長期の学び直しを、雇用保険を活用して実現できるようになったのが大きな特徴です。
● 制度の仕組み
- 対象は「雇用保険の一般被保険者」
- 会社の就業規則や労使協定で「教育訓練休暇制度」が整備されていることが前提
- 従業員が自発的に、無給で 30日以上連続 の教育訓練休暇を取得
- 休暇期間中、雇用保険から 給付金(基本手当と同等または一定割合) が支給される
このように、「働きながら学ぶ」「収入なしで休む」を両立させるための制度です。
2. 誰が受給できる?主な受給要件
教育訓練休暇給付金を受けるには、以下のような要件をすべて満たす必要があります。
✅ 主な受給要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険の一般被保険者であること | 高年齢被保険者・日雇い・短期雇用特例など除外されるケースあり |
| 休暇取得前2年間で通算12か月以上の被保険者期間があること | 賃金支払基礎日数が 11 日以上ある月が対象 |
| 通算で5年以上の雇用保険加入期間があること | 勤続要件としても重要 |
| 休暇が「法定の教育訓練休暇」であること | 自らの選択、会社の選択のいずれも対象 但し、業務命令によるものは対象外 |
| 休暇期間が 30日以上の連続した無給休暇 であること | 有給休暇や短期の休暇では対象にならない |
3. 給付額の目安と給付期間
給付される金額や期間は、休暇取得前の賃金や雇用保険加入状況などによって異なります。
給付額
離職した場合の基本手当と同額で、賃金や年齢に応じて決定されます。
給付日数
| 加入期間 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
| 所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
- 給付額の基準は、通常の賃金の 50〜80% 程度になります。
- 給付期間は、教育訓練休暇の開始日から起算して1 年以内に取得した休暇が対象。複数回に分割取得も可能です。
- ただし、妊娠・出産・育児・病気などやむを得ない事情で訓練継続が困難な場合は、最大で4年以内まで受給期間を延長できる仕組みもあります。
なお、この給付金は、従来の「教育訓練給付金(受講費用補助制度)」とは別制度であり、併用可能な場合もあります。
4. 制度利用の流れと必要な手続き
教育訓練休暇給付金を利用するには、次のような流れおよび手続きが必要です。
- 会社側に「教育訓練休暇制度」があるか確認
就業規則や労使協定で制度が整備されている必要があります。 - 従業員が教育訓練休暇の申請と休暇取得の合意
無給休暇として30日以上連続で休暇を取る旨、事業主と合意します。 - 休暇取得と教育訓練の受講
会社を離れて教育訓練に専念します。講座は職業能力の向上に資するものが対象です。 - 給付金の申請
「教育訓練休暇給付金支給申請書」など必要書類を会社経由で提出し、審査を受けます。 - 給付決定・支給
承認されれば、休暇期間中に給付金が支給されます。
5. 制度を利用する際のメリットと注意点
✅ メリット
- 離職せずにスキルアップや資格取得が可能
- 無給休暇中の収入減を補い、経済的な不安を軽減
- キャリアチェンジ・キャリアアップに伴うリスクを低減
- 企業側にとっても人材育成や定着につながる
⚠ 注意すべき点
- 会社に制度がなければ利用できない
- 休暇中は報酬がないため、家族の理解や生活費の見直しが必要
- 給付金受給中は失業給付など他の給付と併用できない場合がある
- 手続や休暇管理など、企業の協力が必要
- 雇用保険の被保険者期間がリセットされるため、一定期間は失業給付などの給付金を原則受給できなくなります
- 解雇等が予定されている労働者が制度を利用した場合、罰則を受けることがある
6. どんな人におすすめか?
この制度は、以下のような方に特に適していると考えられます。
- 今の仕事に資格や専門性をプラスしたい人
- キャリアチェンジや転職を視野に入れて学び直したい人
- 長期間の講座や研修を受けたいが、収入の確保が心配な人
- 会社にとって「人材育成・定着」「将来の幹部候補の育成」を考えている事業主
7. まとめ|制度を賢く使って、キャリアアップを後押し
「働きながら学び直す」を支援する 教育訓練休暇給付金 は、働く人のキャリア形成や企業の人材育成を後押しする画期的な制度です。
この制度を活かすには、
- 働く本人が意欲を持つこと
- 会社が制度導入や手続き対応を前向きに行うこと
の両輪が不可欠です。
当事務所では、企業の 就業規則整備支援 や 従業員への説明サポート、 そして 個人のキャリア設計相談 を含めたサポートを提供しております。
「スキルアップしたい」「将来に備えたい」とお考えの方、制度の導入・利用を検討している企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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