人生100年時代。今や70歳を超えてもなお、元気に働く方が増えています。企業の定年延長や継続雇用制度も進み、70歳を過ぎても厚生年金に加入しながら働くことは、決して珍しくありません。
では、70歳で退職した場合、雇用保険の「失業給付(基本手当)」は受け取れるのでしょうか?
結論から言うと、通常の失業給付は対象外ですが、「高年齢求職者給付金」という一時金を受け取れる可能性があります。
この記事では、70歳で厚生年金に加入している会社員が退職した場合に受け取れる給付について、制度の仕組み・受給条件・手続き方法・注意点を社会保険労務士の視点でわかりやすく解説します。
■ 高年齢求職者給付金とは?
「高年齢求職者給付金」とは、65歳以上で雇用保険の被保険者だった方が退職し、ハローワークに求職の申し込みをした場合に支給される一時金です。
通常の雇用保険の基本手当(いわゆる「失業手当」)とは異なり、65歳以上の方には原則として「一括支給型」の給付が用意されています。これが高年齢求職者給付金です。
● 給付の主な特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 65歳以上 |
| 支給形態 | 一時金(一括支給) |
| 支給日数 | 原則30日または50日分(被保険者期間により異なる) |
| 申請先 | ハローワーク(退職後、求職申込みと同時に手続き) |
■ 70歳で退職した場合、対象になるのか?
ここで重要なのが、「雇用保険に加入していたかどうか」です。70歳以上で働いていたとしても、雇用保険の適用対象かどうかによって、給付を受けられるかどうかが決まります。
● 雇用保険の適用年齢の上限
雇用保険の新規加入は、原則として65歳未満までに限られています。しかし、65歳を超えても以下の条件を満たしていれば、「高年齢被保険者」として引き続き適用対象となる場合があります。
雇用保険の加入要件(高年齢被保険者)
- 65歳到達時点で雇用保険に加入していた
- 引き続き雇用契約を結び、所定労働時間が週20時間以上ある
- 一定の継続雇用契約がある
よって、70歳で厚生年金に加入しており、なおかつ65歳時点で雇用保険に加入していた方は、雇用保険の高年齢被保険者として認められている可能性が高く、高年齢求職者給付金の受給対象となり得ます。
■ 支給額と日数はどれくらい?
高年齢求職者給付金は、被保険者であった期間(雇用保険の加入期間)に応じて支給日数が決まります。
| 雇用保険の被保険者期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 1年未満 | 30日分 |
| 1年以上 | 50日分 |
※支給額=離職前6ヶ月の賃金日額(1日あたり)× 支給日数
例えば、離職前6ヶ月の平均賃金が日額8,000円だった場合、1年以上の被保険者期間があれば、
8,000円 × 50日 = 40万円が一時金として支給される計算です。
■ 受給のための手続きと必要書類
退職後に高年齢求職者給付金を受け取るには、以下のような流れで手続きを行います。
① 離職票の受領
勤務先から「雇用保険被保険者離職票」を発行してもらいましょう。
② ハローワークで求職申し込み
住居地を管轄するハローワークにて求職の申し込みを行います。
③ 高年齢求職者給付金の申請
求職申込時に併せて申請手続きを行います。書類不備がないよう確認しましょう。
④ 給付金の振り込み
審査を経て、数週間以内に指定口座に一括で振り込まれます。
必要書類(例):
- 離職票(1・2)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 印鑑
- 本人名義の口座情報
- 雇用保険被保険者証(あれば)
■ 注意点とよくある勘違い
●「雇用保険に入っていなかった」場合は対象外
たとえ70歳で厚生年金に加入していても、雇用保険に加入していなければ受給資格はありません。
(特に短時間労働者や請負契約の方は注意が必要です)
● 自己都合退職でも受給可能
基本手当(通常の失業給付)とは異なり、高年齢求職者給付金には「待機期間」や「給付制限」はありません。
自己都合・定年退職でも問題なく支給されます。
● 申請しないと受け取れない
自動的に支給されるわけではありません。必ずハローワークで「求職の申し込み」と給付申請をセットで行う必要があります。
■ よくある質問(FAQ)
Q. 70歳で退職しても、必ず給付金がもらえますか?
→いいえ。65歳以降も雇用保険に加入していたかどうかが重要です。
Q. 給付金をもらっても再就職できますか?
→はい。高年齢求職者給付金を受け取ったあとに再就職しても問題ありません。
Q. 過去に受け取ったことがある場合、再度もらえますか?
→再度の退職でも条件を満たしていれば受給可能です(ただし被保険者期間が必要です)。
■ 社会保険労務士ができるサポート
高齢者の雇用継続や退職後の給付金手続きは、制度が複雑でわかりにくいことも多く、不安を抱える方も少なくありません。社会保険労務士は以下のような支援を行っています。
- 雇用保険・厚生年金の適用状況の確認
- 高年齢求職者給付金の受給資格の事前診断
- 離職票の発行手続きのサポート
- 介護保険・医療制度との連携アドバイス
- 高年齢者雇用安定法に基づく再雇用制度の整備支援
■ まとめ:70歳退職時、雇用保険の有無がカギ!
70歳で働いている方が退職した際、「高年齢求職者給付金」の対象になるかどうかは、雇用保険に引き続き加入していたかどうかが最大のポイントです。
【チェックポイント】
- 65歳時点で雇用保険に入っていたか
- 所定労働時間が週20時間以上だったか
- ハローワークで求職申込と給付申請を行ったか
老後の生活を支える大切な一時金を受け取るためにも、退職前に社会保険労務士に相談しておくことで、もらい損ねを防げます。

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