2025年10月より、健康保険制度における被扶養者認定のうち、19歳以上23歳未満の学生等に対する取扱いが見直されることとなりました。これは、社会保障制度の公平性・透明性を高めるための見直しの一環であり、企業の人事・労務担当者や、実務を支援する社会保険労務士にとっても重要な改正です。
本記事では、「19歳以上23歳未満の被扶養者認定の改正内容」と、「企業が取るべき実務対応」について詳しく解説します。
■ 被扶養者認定とは?
健康保険制度では、被保険者(会社員等)の収入により生計を維持されている家族を「被扶養者」として認定することで、その家族も保険給付を受けることができます。通常、被扶養者となるには、年収や同居の有無、生計維持関係などを基にした審査が行われます。
中でも、19歳以上23歳未満の学生については、これまで比較的柔軟に「生計を維持されている」と見なされ、形式的な審査で扶養認定されてきました。
■ 2025年改正の背景と目的
2025年10月より、19歳以上23歳未満の被扶養者認定に関して、「生計維持関係の確認強化」が行われます。この改正の背景には、以下の課題がありました。
- 実態と乖離した認定の横行:親と同居していない、あるいは生活費の仕送りが少額であるにもかかわらず、形式的に「被扶養者」として扱われているケース。
- 制度の不公平感:同様の年齢層でも、自営業者や国民健康保険の加入者の子どもは保険料を個別に負担している。
- 国民全体の保険制度への信頼確保:適切な被扶養者認定により、医療保険財政の適正化と持続可能性の確保を目指す。
これらの課題を解消するため、厚生労働省は認定基準の見直しを決定し、2025年1月より実施します。
■ 改正の具体的な内容
● 生計維持関係の「実態確認」が必要に
これまでは、学生証のコピーや住民票の提出のみで被扶養者認定が通るケースも多く見られましたが、2025年10月以降は、仕送り実績や生活費負担の証明など、より明確な「実態」を求められます。
● 必要となる確認資料(例)
- 被保険者からの送金記録(振込明細、仕送り履歴など)
- 被扶養者のアルバイト収入明細や所得証明
- 被扶養者の住民票(世帯構成確認)
- 光熱費や家賃等の生活費負担の実態を示す書類
※健保組合・協会けんぽによって求める書類に違いがあるため、事前確認が必要です。
■ 企業が行うべき対応とは?
被扶養者認定の判断・申請は、通常企業の人事労務担当者が窓口となるため、今回の改正によって企業側の対応も変わります。
【1】社員への周知と説明を徹底する
まずは、社員へ改正内容を周知しましょう。特に、大学生・専門学生の子どもを扶養にしている社員が対象です。
- 就業規則や社内報、メール通知等で早期に告知
- 年度更新や扶養異動届提出時に注意喚起を実施
【2】必要書類の提出依頼と審査フローの明確化
申請時には、「何を提出すべきか」「どう審査されるのか」について明確にガイドを提供し、社員にとってわかりやすい手続きを整えましょう。
- 扶養申請書と併せて送金明細等の提出を依頼
- 健保組合との連携強化(書類フォーマットの統一、提出方法の確認)
【3】申請の遅れ・不備によるリスク管理
必要書類が整わなかった場合、被扶養者から除外される可能性があるため、健康保険証の返還や医療費自己負担などの影響が発生します。
- 申請期限を明確化し、リマインドメールを設定
- 申請不備があった場合の対応マニュアル整備
■ 被扶養者から除外された場合の影響
被扶養者認定を受けられなかった場合、該当する学生本人は国民健康保険に加入する必要があります。これにより以下の負担が発生します。
- 国民健康保険料(自治体によって異なるが、年額10万~20万円程度)
- 学生本人が保険手続きを行う手間
- 一時的な「無保険状態」のリスク(未申請期間中の医療費が全額自己負担)
このような影響を防ぐためにも、企業と社員の協力が不可欠です。
■ まとめ:制度の見直しに備え、早期の準備を
2025年からの被扶養者認定見直しにより、形式的な扶養申請では通らないケースが増える見込みです。企業としては、制度改正の本質を理解し、社員への周知・実務体制の整備を進めることが重要です。
以下、企業が取るべきアクションを整理します。
| アクション項目 | 内容 |
|---|---|
| 情報収集 | 健保組合・協会けんぽからの通知を確認 |
| 社員周知 | 該当社員にメールや掲示で早期案内 |
| 書類準備 | 被保険者・被扶養者双方が揃える必要書類をリスト化 |
| 審査フロー | 社内での確認ルールを明確化し、手続きの遅延を防止 |
| 問い合わせ窓口の設置 | 社会保険労務士や人事部への相談体制を強化 |
■改正の要点まとめ
- 施行日:2025年10月1日から
- 対象者:19歳以上23歳未満の子(主に学生)を被扶養者とする場合
- 主な変更点:
- 従来よりも収入状況の証明や生活実態の確認が厳格化
- 「学生」という理由だけで認定されにくくなる
- 収入要件(130万円未満)などの基本的な認定基準がより厳密に適用
■ 社会保険労務士としての支援
今回のような制度改正は、企業にとっては負担増ともなりかねません。私たち社会保険労務士は、制度改正の解説、社員説明資料の作成、審査フロー整備の支援などを通じて、企業の実務対応をサポートしています。
お気軽にご相談ください。未来に向けた制度運用を、正確かつ円滑に進めましょう。

コメント