はじめに
令和7年10月1日から、「育児・介護休業法」が改正施行されます。今回の改正は、少子化や介護離職防止を背景に、より柔軟で実効性のある育児休業・介護休業制度の整備を目的としています。企業としては、法改正にあわせて就業規則や社内制度を見直すことが必須となります。
本記事では、改正育児介護休業法の主な改正点と、その対応にあたって就業規則作成で注意すべきポイントを、社会保険労務士の視点から解説します。
改正育児・介護休業法の概要
1. 男性育休の取得促進(出生時育児休業の柔軟化)
改正の大きな柱の一つが、男性の育児休業取得率を高めることです。これまでの「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、子の出生後8週間以内に最大4週間取得できるものでした。
令和7年10月からは以下の点が見直されます。
- 分割取得がより柔軟に可能
- 配偶者の出産状況に応じて取得時期の選択肢が拡大
- 企業による休業取得意向確認・個別周知の義務が強化
2. 育児休業の分割取得の拡大
従来、育児休業は原則2回までの分割取得が可能でしたが、改正により取得回数の柔軟化が進みます。仕事と育児を両立しやすくするため、夫婦で調整しながら複数回取得することが可能になります。
3. 介護休業制度の見直し
介護離職を防止する観点から、介護休業・介護休暇についても柔軟化されます。
- 介護休暇の取得単位の見直し(時間単位での利用促進)
- 企業による仕事と介護の両立支援制度の周知義務
4. 企業に求められる義務の強化
今回の改正では、制度そのものの拡充だけでなく、企業の運用責任が強化されています。具体的には、
- 就業規則等への明記義務
- 従業員への制度周知義務
- 取得意向確認の義務化
が盛り込まれています。
就業規則作成・改定の注意点
改正育児介護休業法への対応で特に重要なのは、就業規則や社内規程の改定です。実際の運用を見据えたルールを定めなければ、トラブルの原因となりかねません。
1. 休業取得の要件・申出手続きの明確化
休業を取得する際の申出期限や方法を、就業規則に定めておく必要があります。例えば、
- 「休業開始の○週間前までに申し出ること」
- 「書面または電子申請での申請」
など、実務に即したルールを整備しましょう。
2. 分割取得に対応した規程整備
改正により分割取得が可能となるため、
- 「何回まで分割できるか」
- 「その都度の申出方法」
- 「給与計算・社会保険料への影響」
を明文化しておくことが重要です。
3. 介護休暇の時間単位取得の規定
時間単位での介護休暇取得が制度として進むため、
- 取得単位(1時間からか、半日からか)
- 賃金控除の方法
- 勤務時間管理のルール
を規程に落とし込みましょう。
4. ハラスメント防止の記載
育児休業や介護休業を取得する従業員に対して、不利益な取扱いや嫌がらせが行われることを防ぐため、育児・介護休業ハラスメント防止規程を明確にしておく必要があります。
5. 社内周知の徹底
就業規則を改定するだけでなく、従業員への周知も法律上義務づけられています。説明会の開催やイントラネットでの公開など、理解促進に努めましょう。
中小企業が押さえるべきポイント
特に中小企業にとって、今回の改正は大きな負担に感じられるかもしれません。しかし、以下の視点を押さえておくことで、円滑に対応できます。
- 助成金の活用
育児休業の取得促進や職場復帰支援を行った企業には、「両立支援等助成金」が利用できます。制度改正にあわせて積極的に活用しましょう。 - 勤務形態の柔軟化
時短勤務やテレワークを併用することで、休業を長期化させずに両立を図ることが可能です。 - 代替要員確保の仕組み
育児休業・介護休業が柔軟化されることで、突発的な休業も増える可能性があります。派遣社員や契約社員の活用、社内でのジョブローテーションを計画的に導入することが望まれます。
まとめ
令和7年10月1日から施行される改正育児介護休業法は、育児・介護と仕事を両立できる社会を目指すための重要な制度改正です。企業には、制度を整備するだけでなく、実際に従業員が利用しやすい環境を作ることが求められます。
特に就業規則の改定は必須であり、申出手続き、分割取得への対応、介護休暇の時間単位取得、ハラスメント防止規定など、具体的な運用ルールを整える必要があります。
中小企業にとっては負担もありますが、助成金や柔軟な働き方を活用することで前向きに対応することが可能です。法改正は企業にとってもチャンスと捉え、従業員が安心して働き続けられる環境づくりを進めていきましょう。

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